9.2 単純記憶より体系記憶:意味/理由/ストーリーで覚える

更新日 2021年5月23日


単純記憶と体系記憶

『単純記憶』とは、ただ記号のように覚えることを言います。

『体系記憶』とは、知識の意味を理解し、関連付けながら記憶することです(本サイトの造語です)。



例えば以下の14文字のひらがなの並びを10秒で覚えてください。
「や」「は」「き」「だ」「ょ」「う」「い」「ん」「し」「か」「た」「り」「べ」「だ」

中々難しいですよね?


では同じ14文字ですが、以下を10秒で覚えてください。
「べ」「ん」「き」「ょ」「う」「は」「や」「り」「か」「た」「し」「だ」「い」「だ」

覚えられますよね?


同じ14文字なのに、なぜ2番目の方が覚えやすいのでしょうか?

それは単に14文字を覚えるのでなく「べんきょうはやりかたしだい」つまり「勉強はやり方次第」という意味を認識しているからです。

単純記憶よりも意味を関連付けた体系記憶の方が覚えやすい、というのはこういうことです。


歴史や化学などでよくある暗記の『語呂合わせ』も、そこに意味を持たせることで覚えやすくするという意味では体系暗記の一種です。



プロの将棋棋士は、対局が終わった後に、当たり前のように1手目から再現します。

また実践で指された1局面を見せると、すぐに覚えられるそうです。

さぞかしすごい記憶力の持ち主と思いますよね?

ですがそんな将棋のプロでも、ルールを知らない初心者が適当に並べた駒の配置は覚えられないそうです。

プロが指した将棋は駒と駒のつながりがあるから覚えられるが、初心者が並べた駒と駒のつながりがないランダムな配置では覚えれない、ということです。

つまり将棋のプロも、単純記憶が得意なわけではなく、体系記憶を活用して意味を持たせながら覚えているために、すごい記憶力を発揮できているのです。




東大合格者はこの体系記憶、つまり「体系立てて覚えることの大切さ」を理解し、実践しています。




なお、一説によると小さい時は『単純記憶』が中心だけれども、年齢を重ねるにつれて『体系記憶』が得意になると言われています。

小さい時の勉強の経験から、何度も書いて覚えるなどの『単純記憶』を中心に覚えてしまう人が多いですが、受験において大事なのは『体系記憶』で、その覚え方の切り替えができた人は受験勉強で優位に立てることになります。





体系記憶の例:
数学の公式を「公式の作り方」で覚える

例えば和の公式は以下です。



『1/2 n(n+1)』を記号のように単純暗記で覚えていると、本番で「これで正しかったかな」と記憶があいまいになったときに困ります。

一方で、以下のように公式の作り方をあわせて覚えるとどうでしょうか?


青い三角形を逆さにして合わせると、n× (n+1) 個の四角形になる、青い三角形はその半分なので1/2 n(n+1)になります。

このように覚えておけば、1/2 n(n+1) の意味が理解できるし、公式を忘れても思い出せます。



さらに応用問題を出されても対応できるようになります。

例えば1+3+5+・・・+99を求めてください。

1/2・n(n+1)が当てはめられないので、公式を丸暗記していた人はひとひねりしなければいけません。

公式の作り方として覚えている場合はどうでしょう。

「元々のかたまりをひっくり返して足す」という考え方は1+3+5+・・・+99でも同じなので、以下のように解けます。


実際、私は和の公式1/2・n(n+1)を覚えてはおらず、代わりに「元のかたまりをひっくり返して足す」と覚えていました。

公式を忘れる心配もないですし、応用問題が出ても、同じ考え方で解けるわけです。




体系記憶の例:
英単語を語源で覚える

英単語は細かく分解しても意味があることがあります。

例えばspectは「見る」という意味です。

inは「中」で
inspectは「中を見る」⇒「検査」

prosは「前」で
prospectは「前を見る」⇒「見込み」

susは「下」で
suspectは「下を見る」⇒「疑う」

exは「外」で
expectは「外を見る」⇒「期待」


覚えやすくなるだけでなく、スペル間違いも減ります。

また、慣れると初めて見た単語の意味を推測できるようにもなります。


※ただし全ての英単語が語源の意味でカバーできるわけではないし、推測にも限界はあるので、あくまで補助的に活用するのをおススメします。





体系記憶の例:
歴史を流れと理由で覚える

例えば以下を覚えるとします
・元寇(1274年、1281年)
・徳政令(1294年)
・鎌倉幕府滅亡(1333年)

これを「なぜ」という意味を加えながらストーリーにしていきます。

たとえば以下です。

元が1274年と1281年に日本を攻めたのを『元寇』という。鎌倉幕府はなんとか追い払ったが、土地を獲得できなかったので、武士に払う恩賞がなかった。それで武士の不満がたまり、幕府は『徳政令』で借金をチャラにした。しかし経済は混乱し、支配力を失った鎌倉幕府は1333年に滅亡した。

こうして覚えるとバラバラだった出来事がつながりませんか?

順番を間違えることもありませんし、実はこれが論述対策にもなります


この『体系記憶』こそ、暗記に役立つだけでなく、大学が求める応用力につながります。





できるだけ体系記憶で、残りは単純記憶で

『体系記憶』は、覚えやすい、応用がきく、論述対策にも効く、と良いことだらけです。

ただし覚えるものを全て『体系記憶』に整理することはできません。

受験では歴史の年表など、どうしても『単純記憶』をしなければない事項が出てきます。

そこで「なぜ」を加えながら『体系記憶』に整理できるものはなるべく体系的に覚え、それができないものは『単純記憶』で覚える、という意識がいいと思います。



本コラムのまとめ

  • ただ記号のように覚えるのが単純記憶、意味や理由やストーリーで覚えるのが体系記憶。
  • 将棋のプロ棋士や東大生は暗記力があるのではなく、体系記憶を最大限活用しているから覚えられる。
  • 数学の公式を「公式の作り方」で覚える、英単語を語源から覚える、歴史をストーリーで「なぜ?」を交えて覚える。
  • できるだけ体系記憶で、体系記憶に整理できないものは単純記憶で覚える。